2013年6月に、子宮頸がんワクチンの積極的な接種勧奨を中止する措置がとられてから、接種される方は激減しています。その理由は、子宮頸がんワクチンの接種後に、広範囲に広がる痛みや、手足の動かしにくさ、動かそうと思っていないのに体の一部が勝手に動いてしまう、などの多彩な症状が起きたことが副反応ではないかとする疑いが報告されているためで、現時点でこの現象は「機能性身体症状」(何らかの身体症状があるものの、その原因が特定できない状態を意味します)であると考えられています。これがワクチンの副反応なのかどうかについては様々な意見があり、現在も論争中で、裁判にもなっていますが、結論は出ていません。
しかし、この積極的勧奨の中止の期間が延びることによって、接種しなかった方々の子宮頸がんになる確率が明らかに増えてしまうことも事実です。
子宮頸がんは、日本では年間約10,000人が発症し、それにより約2,700人が命を落とすという重大な疾患です。しかも、20歳後半から発症するという、比較的若い女性に多いとされている疾患です。その原因は、性的接触により感染するヒトパピローマウイルスによるものです。近年の情勢では、中学生になると性的接触の機会が増え始め、高校生・大学生とどんどん増えてしまい、「うちの子に限って・・・」「まだ早いし・・・」は通用しない時代になっています。
ワクチンの接種で、10万人あたり859~595名が子宮頸がんになることを回避でき、10万人あたり209~144名が子宮頸がんによる死亡を回避できると試算されています。一方で、2017年8月までに副反応の疑いと報告された総数は3130人で、10万人あたり52.5人で0.1%以下であり、しかもワクチン接種との因果関係が証明されているわけではありません。
こうしてみると、ワクチンのデメリットと疾患のデメリットを比べた場合、どちらがよりデメリットかは一目瞭然かと思います。
そして、WHO(世界保健機構)も、子宮頸がんワクチンの積極的接種勧奨を差し控えている日本を名指しで批判しています。
しかし、被害を訴えている女性の治療や救済という話になると、今の国の救済制度が、「ワクチン接種と因果関係がある」と証明されない限り「救済の対象とならない」という制度上の問題で争われているわけで、因果関係のあるなしにかかわらず、ワクチン接種後に一定の副反応と思われる症状が見られた場合には、一律救済の対象とする制度であれば、何ら争う必要はないのだと思われます。
これらを踏まえて、今一度、子宮頸がんワクチンの接種を検討していただければと思います。せっかくの定期接種で、3回分で約5万円するワクチンを国と市の負担で受けられるのですから、有効利用してみませんか?